Tomorrow
絵本を通して届けたい
思いやりの気持ち。

RESPECT FOR THE INDIVIDUAL

人との違いは自分の個性

さまざまな動物が一緒に海を渡り、空を越えて同じ方向を目指す様子が描かれた「あるままBASE・あるままOYAKO」に飾られた壁画。言葉がなくても不思議とストーリーが浮かんでくるこの作品は、パナソニックセンター大阪を行き交う人の足を止め、心を和ませる。
「決まった絵を描くより、みんなで力を合わせた方が思った以上の作品が生まれますね」
そう話すのは、コーナー設立のオープニングイベントで壁画を制作した絵本作家・谷口智則さん。参加した子どもたちのリクエストに応えながらライブペイントで完成したこの作品は『みんなで創る優しい世界』をテーマに描かれた。普段の制作では動物の特徴からインスピレーションを受けて主人公を決めるという谷口さんだが、どんな想いで絵本制作に取り組んでいるのだろうか。

『みんなで創る優しい世界』をテーマに、あるままBASE・あるままOYAKOオープニングイベントで谷口さんと参加した子どもたちによって創られた「あるまま」を象徴する壁画。

「あえて主人公を人間にするのではなく、例えばカメレオンだったら色が変わることや、クジラなら大きな口を開けられるなど、その生き物の個性を引き出すことで、読者の方にも人との違いを『自分の個性』とポジティブに受け止めてもらいたいと考えています」
個性が異なる100人のサンタクロースや、みんなより歩みが遅いカメくんなど、自分に似たキャラクターを探しながら読むのも楽しい。谷口さんの作品は、子どもだけにとどまらず、大人が読んでも引き込まれるものばかりだ。
「絵本は子ども向けというイメージが強いですが、どんな世代の方が読んでも癒しを与えられ、心の栄養になるような作品にしたいと考えています。読む年齢やその日の気分によっても受け止め方が変わるのが絵本の面白さ。長く手元に置いておきたいと思ってもらえる作品を生み出していきたいです」

左から、100にんのサンタクロース、カメレオンのかきごおりや、くいしんぼうのクジラ

できることから始める
持続可能な街づくり。

絵本作家として数々の作品を生み出すかたわら、地元である四條畷市のPR大使を務め、地域を盛り上げる活動を積極的に行なっている谷口さん。どうして地域の取り組みを行うようになったのだろうか。
「作家になって海外や東京に行くことが増えたのですが、やっぱり四條畷に帰ってくるとすごくホッとできるんです。小さい頃から地元の図書館に通い、そこで本を好きになったことが絵本作家という職業に繋がっている。今の僕を形づくってくれた街に何か貢献できることはないかと考えるようになりました」

音楽演奏に合わせた読み聞かせや、ワークショップなど、谷口さんの絵本の世界を楽しむイベントをパナソニックセンター大阪で開催。

まずは地元の人が楽しめるよう図書館にモニュメントをつくり、外からも遊びに来てもらいたいとギャラリーカフェをオープン。さらに街を巡ってもらうために、谷口さんの代表作でもある「100にんのサンタクロース」のオブジェをさまざまな施設や店舗に設置。谷口さんならではの活動は今後も広がっていきそうだ。
「“地方創生”というと大げさに聞こえるかもしれませんが、住んでいる人に街を好きになってもらうことが何よりも大切。地元の魅力を再発見してもらい、長く住み続けたいと思ってもらえる手助けができれば嬉しいです」
持続可能な街づくりが課題とされる今、自分の得意なことを生かした谷口さんの取り組みは、これからの地域活性化へのヒントにもなりそうだ。

谷口さんのギャラリーカフェ「ZOOLOGIQUE」
まるで絵本の世界に入ったかのような空間でカフェメニューを楽しむことができる。

多様性理解の広がりが
心の豊かさに。

谷口さんの作品は日本だけにとどまらず、海外でも多くの支持を受け、さまざまな国で出版されている。その中で『教材が不足しているカンボジアの子どもたちに絵本を届けたい』との声を受けて生まれたのが「おねぼうなたいようさん」。それまでカンボジアに行ったことがなかった谷口さんは、現地を知った上で作品を作りたいと実際に足を運び、体験したことをもとに描き下ろしたという。
「カンボジアは電気が十分に通っていない村もあるので太陽が昇って1日の始まりを感じ、朝はにわとりの声で目が覚めるんです。日本だと太陽の存在を意識することは少ないのですが、カンボジアで生活するにはとても重要な存在。そこからにわとりを主人公に、みんなで力を合わせて太陽を起こすというストーリーが浮かびました」

カンボジアの幼稚園や小学校で「おねぼうなたいようさん」を読み聞かせする特別授業を開催。

異なる動物たちが協力して一つの目標に向かう姿は、助け合うことの素晴らしさと、多様性を認めることで生まれる豊かさを改めて考えさせられる。
「太陽を起こす場面では子どもたちも一緒に掛け声をしてもらい、力を合わせた方が大きな声になることを体験してもらいました。読み聞かせだとこうやって参加してもらえたり、文章より絵をしっかり見て想像を膨らませてくれたりするので黙読とは違う楽しみ方をしてもらえるんです」
今月24日には、パナソニックセンター大阪「あるままBASE」で読み聞かせイベントを開催する。そこではカンボジアの子どもたちとオンラインでつなぎ「おねぼうなたいようさん」を日本の子どもたちと一緒に楽しんでもらう予定だ。

おねぼうなたいようさん

「主人公やストーリーが違っていても、伝えたいことは実は同じなんです。今って情報がすごく多いので、人と比べてしまったり、みんなと同じじゃないとダメだと考えてしまいがち。でも、苦手や違いをなくすのではなく、個性として認め合えれば、もっとくらしやすい社会になると思うんです。絵本を通して多様性への関心を広げてもらえたら嬉しいです」
現在この作品は、カンボジアの幼稚園や小学校など多くの施設で教育絵本として活用されている。離れた場所で同じ作品を楽しむ今回のイベントは、子どもたちがダイバーシティについて学ぶ第一歩になりそうだ。

谷口智則さん
Profile
谷口智則さん
「サルくんとお月さま」で絵本作家デビュー。フランスやイタリアなどでも数多くの絵本を出版。絵本作家以外にも四條畷市のPR大使やギャラリーカフェの運営、絵本の読み聞かせなど幅広い活動を行っている。
「あるままBASE」・「あるままOYAKO」オープニングイベント動画公開中!
子どもたちのリクエストに応えながら、谷口さんによって描かれたオープニングイベント壁画ライブペインティングの様子をご覧いただけます。

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