
お気に入りの器を手に入れたことが、
料理と向き合うように
なったきっかけ。
週末の昼下がり、家族が囲む食卓には品数いっぱいのおかずが並んでいる。黄色い卵をお肉で巻いたメインディッシュは、赤いプチトマトと緑のレタスが添えられて、見るからにおいしそう。かわいい小皿には季節の野菜やフルーツが並び、まるで和風カフェのランチのようだ。この料理の数々を作ったのは、川上ひとみさん。色どりにこだわった数々の料理を日々SNSにアップしているが、実は料理を作ることが得意ではなかったという。
「元々は外食中心の生活で、結婚してからもそうでした。今も料理自体はそんなに好きじゃないんです(笑)」
とはいえ、外食ばかりというわけにもいかず、テンションを上げるためにSNSでいろいろな料理を眺めていたという川上さん。やがて、料理を盛り付ける「器」に興味をもつようになった。
「器って、一つひとつ表情が違ってかわいいんですよね。気がついたら2年あまりで100点以上集めていました。お気に入りの器を手に入れるために、朝7時から並んだこともあるんです」
お気に入りの器たちが映えるような、素敵な料理を作りたい。その思いから、見た目においしそうな料理をレシピサイトやSNSで探しては、自分でも試してみるようになった。
「料理を『きちんと』『正しく』作ろうとすると大変ですけど、私は見た目優先で作っています。重視しているのは、器と料理の色のバランス。だから、まずはトレイにその日使いたい器を並べて献立を考えるんです。この器に煮物をよそったら、その隣にはグラスにサラダを置こう、とか。トレイの上でいろいろ考えるのが楽しいです」
家族みんながハッピーな気持ちで
食卓を囲めることが一番。
トレイに並べた器の形や色から、その日に作る料理のインスピレーションを得るという川上さん。レパートリーもきっと豊富なのだろうと思いきや、実は家族の好き嫌いが多く、献立にいつも困っているという。
「肉が中心で、魚や野菜はあまり食べてくれないんです。夫は中華も好きじゃないから、たいてい洋食か和食になりがちで」
それでもお味噌汁に野菜をたっぷり入れるなど、栄養面も意識しているそうだが、一番大事なのは“ハッピーでいること”だという。
「せっかく作ったのに、家族が食べてくれないのは悲しいですよね。だったら、好きなメニューだけを作ればいいと思うんです。家族みんなが笑顔になれて、おいしいねって思えるのが一番!」
料理に力を入れるようになって、クリスマスや誕生日などのイベントを家族で楽しむ機会が増えたという。カラフルな料理が並ぶ食卓を囲めば、家族の会話も弾むにちがいない。しかし、手のかかる料理を毎日作るのは大変ではないだろうか。
「普段の料理にかけるのは1時間以内です。下ごしらえをしておいて、なるべく時短で作っちゃいますね。それに、料理をする気分じゃない時は、外食や冷凍食品で済ませることも。ずっと頑張ろうとせず、時には手を抜くことも大事です(笑)」
家事全般の中でも料理が苦手、という人は少なくないが、川上さんのように肩の力を抜いて考えればいいのかもしれない。
「料理は今でも好きじゃないけど、好きな器に盛りつける楽しみがあるから続けられます。これからもいろいろな器を集めて、料理づくりに向き合っていこうと思います」